ONENESS GROUPに響くいのちの音色 矢澤祐史が語る回復論とは? 2014年7月6日(日)【会場】日比谷コンベンションホール

設立趣旨

依存症はWHO(世界保健機構)が認定している心と体の疾患であり、性別、社会的地位、年齢、信条、人種に関係なく人々に襲いかかります。
依存症は主に男性が患う疾患であるという思い込みの中で、たくさんの女性依存症者が必要な治療を受けられずに苦しんでいます。


僕が日本で回復施設を作り今年で7周年を迎えます。この7年の間に沢山の「日本初」を成し遂げてきました。
日本で初めて、依存症治療先進国アメリカから治療プログラムを導入し、治療共同体を作り上げました。
日本で初めて、インタベンションを取り入れました。
日本で初めて、依存症者退寮後の雇用先を創出しました。
日本で初めて依存症研究者との共同研究センターを作りました。

そして、常により多くの人が回復できるよう、回復率の向上に努力し続け、トラウマやPTSDにも対応できる、きめ細かなプログラムを取り入れてきました。努力の甲斐あって、我々のプログラムの有効性が口コミで広がり、インタベンションの問い合わせがひっきりなしに届くようになりました。

この2年で入寮者は3倍に増えました。

そして、僕たちの施設の成長に伴い、ひっきりなしに、依存症の御嬢さんを持つご両親から、悲痛な願いが届くようになりました。「矢澤さん、うちの娘を助けて。」「うちの娘の行き場所がないの、矢澤さんどうしたらいいの。」「お願いです。うちの娘も回復させて下さい。」涙ながらに僕の腕をつかみ、必死に助けを求める、ご両親の姿に、今の僕はなすすべがありません。

そして、悲しい現実がつくづく嫌になり、行き場のない女性のために立ち上がろうと、依存症対策の先進国アメリカのアディクションカウンセラー(設立委員会 委員 メロディ・ビィーティー)と共に決意しました。

日本は、先進諸国の中にあって、特に女性らしさを求められ、女性には「恥」の概念が強く植え付けられます。依存症で苦しみながらも、自分も家族も外部に助けを求めることがなかなかできません。そして、アディクションにより、付き合う相手も、環境も悪化の一途をたどり、暴力や性被害にあうことも少なくありません。更に、徐々に減って行く、人間関係から、孤独になり、風俗産業や売春に身を染め、それでも尚、助けを求められず、堕ちて行きます。そして行きつく所は、刑務所。しかも、何度も何度も刑務所に入る女性依存症者。そしてネグレクトされる子どもたち。

女性に対する支援が殆どない日本では、女性依存症者は「特殊な人の特殊な問題」とかたずけられ、打ち捨てられています。一般に依存症者における自殺率の高さには目を見張るものがあります。依存症に苦しみながら子育てをしている母親に思いを馳せて下さい。その中で育ってゆく子供達の行く末にも。

アメリカには、約1700万人のアルコール依存症者がいます。10000余りの依存症治療施設とそのスタッフらが、苦しんでいる依存症者の回復のために日夜努力を重ねています。
日本の人口はアメリカの半分弱とはいえ、依存症治療施設が国内に100前後しかない現状は満足できるものとはいえないでしょう。依存症における遺伝的要素の関与が明らかになった今、日本における依存症者数の推定が約200万人というのも首をかしげざるをえません。

依存症からの回復の大きな指標となる自助グループのメンバー数を比較してみましょう。アルコール依存症の自助グループのメンバー数で言えば、アメリカは200万人、うち女性は約65万人。日本はメンバー数15000人、うち女性は2000人弱。アメリカの人口は日本の2倍強。そこに日本の300倍もの女性メンバーがいる、この事実は日本の依存症治療の現状についてたくさんの事を語っているように思います。

最近の研究により、依存症の進行度や発症の機序における男女差が科学的に明らかになりつつあります。アルコール依存症を例に挙げれば、女性における進行速度の早さや、女性特有の病状は、アルコール脱水素酵素の活性や分布における男女差が原因であるというデータが発表されています。脳の構造には男女差があるため、思考や感情が脳内で処理される過程にも男女差があります。ですから、感情に取り組むグループ治療をする際にも、男性グループとは全く違った配慮をしていかなくてはなりません。

特に虐待経験や屈辱感に関しては、男性と女性では全く違った取り扱いが必要です。アメリカで優秀な治療成績を上げている施設は、男性と女性を分けて治療プログラムを提供したり、異性のクライアントとの接し方のルールを徹底したりして、治療環境を整える努力をしています。アメリカの依存症業界には「デトックス・ロマンス」という言葉があります。治療初期の段階にいる男女が恋愛関係なる事です。
アメリカの依存症治療にたずさわる人々は皆、この言葉を知っています。依存対象を恋愛に置き換えただけなのに、回復と勘違いして、治療の場を去ってゆく。そしてリラプスします。これで死んでゆく女性が後を絶たないからです。女性の依存症者は、恥の意識から解放され、何か頼るものを探さずに、自立した市民として生きて行く事を学ばなければなりません。

女性に特化した治療プログラムの普及とそれを提供する場を作ることは、私たちの社会の急務であるという信念のもと、我々はここに女性のための依存症治療施設設立委員会を立ち上げました。皆様の熱い声援・支援をお願いすると共に、今現在苦しんでいる女性依存症者の方々にとってよりよい社会基盤が整うことを心から願ってやみません。

日本の女性依存症者とそのご家族の悲しみ、叫びにどうぞ目を向け、耳を傾けて下さい。僕は、女性依存症者にも有効なプログラムを導入し、多くの女性を助ける施設を作ります。女性にも助けがいるのです。「病気が問題」であってその人が問題なのではありません。問題が問題なのです。残念ながら法人の現状では女性が入所できる環境が整備されていません。問題に対処するために米国同様のクオリティの治療施設を設立します。

日本には、平塚雷鳥という女性解放運動家が、日本女性について説いたこの様な名言があります。

「元始、女性は実に太陽であった。真心の人であった。今、女性は月である。他によって生き、他の光によって輝き、病人のような蒼白い顔の月である。」

僕は、依存症をもつ女性たちにもう一度太陽の輝きを取り戻してほしいと願っています。