子どもたちのことについて、今こそ大人が話しましょう


「タイガーマスク基金」の勉強会に急遽参加!してきました。

 

*タイガーマスク基金とは?

http://www.tigermask-fund.jp

児童養護施設で暮らす&巣立つ子どもを応援するとともに、

子ども虐待やDVがない社会を目指して活動しているNPO団体。

平成24年度には30人の子どもたちに、大学進学資金の援助をしたそうです。

 

今回の勉強会のテーマは「子どもたちに、寄り添うということ」。

「情緒障害児短期治療施設」や「自立援助ホーム」という子ども・若者の施設の施設長から

それぞれの現場での現状を聞きました。

 

 

「情緒障害児短期治…?」「自立を援助するホーム?」

初めて名前を聞く人も多いかもしれません。

 

情緒障害児短期治療施設とは、全国に38か所ある施設。

もともと、家庭にそんなに問題はなさそうなのに、学校に行けなかったり、

引きこもってしまったりする感受性の強い子どもたちを短期で預かる施設としてスタートしました。

それが、時代とともに役割を変化させていき、

今では、虐待を受けた子どもたちの心理的なケアをするための施設、に様変わりしました。

児童相談所も学校もお手上げ、地域でケアをするのは難しいと言われた子どもが、

集団で生活をするわけです。大変でないわけがありません。

 

高知にある情緒障害児短期治療施設「さくらの森学園」の施設長中村久美さんは、

「毎日が戦場。子どもの暴力で職員がケガをすることもしょっちゅう」だと言います。

複雑で重たい問題に向き合い、エネルギーも消耗し、本当にグッタリする毎日だけれど、

そんな中でも、ただ殴っていた子どもたちが「これって、パパにされていたことだよね」

「あ、ママとおんなじことしてた」と、自分の行動に一つずつ気付きを得ていく瞬間があり、

そうした「子どもの育ち」がやはり職員の励みになるのだと語っておられました。

 

 

 

自立援助ホームとは、全国に105か所ある、いわば自立のためのトレーニング施設。

定員6名ほどの規模のものが多く、外観は大きめの一軒家といったところです。

そこでは、一人ずつ個室が与えられ、風呂や食堂は共同。

食事は職員が作るところもあり、寮生は月3万円ほどの寮費を支払います。

 

かつて児童養護施設で育った子どもたちは、中学か高校を卒業後、

住み込みの仕事に就く他に選択肢がない時代が長く続きました。

その多くが中卒で、結果的に仕事が続かず、中には社会でうまくやっていけなくなる子もいました。

もともと自立援助ホームとは、そうした時代に、必要に迫られて子どもたちが集まる場所としてスタートしたのです。

最初の頃は、4畳半の一間に十何人が一緒に生活するようなホームもあったそうです。

 

こちらも時代とともに役割が変化し、

最近では、施設や里親家庭を経験したことがない子どもたちが、3分の2を占めるようになったそうです。

18歳くらいになって、「自分の家庭って普通じゃない」ということが分かってきて、

家を出ることを決めた子も多くいる、と話していたのは、

東京の自立援助ホーム「あすなろ荘」のホーム長、恒松大輔さん。

年齢に応じた子育てをされてきていない若い人の「育て直し」が必要となり、

新たなホームの需要が発生しているとの現状を訴えていました。

 

 

現在の、こうした子どものケアに関係する人々が口を揃えて言うのは、

ケアをする側の余裕と教育が全く足りていないということです。

端的に言ってしまえば、「国や自治体が組む予算や人員配置の規定が圧倒的に足りていない」のが

今の子どもたちを取り巻くケアの現状です。

 

 

子どもたちは、自ら声を上げることがありません。

子どもには選挙権がないから、たとえ無視してもどこかから大きな反発を受けることは少ないし、

たとえ優遇したとしても、それが直接の支持や得票にダイレクトに繋がることも少ない。

『大人の視点』から、「子育て」「教育」を応援する政策を打つのが普通とも言えます。

社会は大人が作っているのです。当たり前と言えば、当たり前ですが。

 

 

だからこそ、変えにくい構造。

 

 

子ども後ろ姿

 

施設長たちのパネル・ディスカッションが終わった後は、

参加者数人でグループを組み、いろいろと議論する時間がありました。

 

今回、たまたま近くに座っていたという理由だけで組まれたメンバーは、

なかなか面白い取り合わせでした。

 

まず、この春から保育士になる予定で、施設で働くことも想定して、現場の知識を得たいと思って来た熱心な大学生。

 

そして、児童養護施設で育ったのち、企業に就職し、長らく施設で育ったことについて特に考え直すこともなかったが、

40歳を過ぎてから、なぜだか突如、NPOの子ども支援活動などに足が向いていた…という男性。

 

丁寧な取材を重ね、児童虐待をテーマにした映画を制作した若い映画監督。

 

アルコール依存症の母を持って大変な経験をしたが、大きくなってから自分の人生を整理したところ、

子どもに関係する活動に惹かれるようになったという、企業で人事・採用を担当しているOL女性。

 

立場も、経験も、ものの見方も、価値観もそれぞれに違う。

一通り自己紹介を済ませたのち、話は自然と、今話題のあのドラマのことになりました。

 

最近では、電車の中などでも、このドラマについて話していたり、誰かが解説していたりするのをよく聞きます。

基本的に批判的なものが多いのは当然のことで、

そもそも「テレビドラマ」という娯楽が主な目的のものに、児童養護施設というテーマを乗せてよかったのか。

誰かが傷付く可能性があるならば、即刻中止すべきではないか。

そうした「そもそも放送してよいのか」という議論含め、考えるべき材料がふんだんにあります。

 

今回のメンバーの間でも、

「何より制作者の取材不足が問題。ずさん過ぎる。批判されても仕方ない。

テレビドラマの制作は、そんなに慎重に考えてやっておらず、

あくまでも視聴率、数字を取ることが第一のはず」という映画監督。

「ちゃんと全編見たわけではないけれど、子どもたちへの影響が心配。

ただ、こうした議論を呼んでいるのも、ドラマ制作者の意図かもしれない」という大学生。

「意外と子どもたちの方が賢く冷静に見ている気がする。

実際に施設で頑張っている職員にとっては、批判したくなる内容だと思う。

だけど、一般の視聴者は、それに引っ張られるよりも、ニュートラルに見守って行けばいいと思う」というOL女性。

「実際の施設内は、正直、あんなもんじゃない。もっとドロドロしているぐらいだった。

批判されているが、かなりディフォルメして、ソフトに描いているとすら思う。

議論を呼んだのはいいこと。ここから、実際はどうなのか、に興味を持ってほしい」という施設出身の会社員。

率直な意見が交わされ、色々な立場ならではの声が出てきました。

「この議論を、どう終着させるかは、番組制作側の姿勢にもよるけれど、

一人一人の見た人間にもかかっている。

『知った』ことで、もっと学び、動いてほしいし、

今、現場の近くにいる大人は、社会の前向きな学びになるように誘導する役割があると思う」

というのが私の意見です。

 

 

現在、ネット上でも、色々な立場の人が、様々な意見を述べています。

痛感するのは、「『子どものため』と思っている大人同士なら、もう少し手を取り合おうよ!」ということです。

確かに、言い回しや表現などで、ドラマ制作者だけでなく、

個人的な発言に対しても、「この言い方は許せない!」「この人おかしい」と思うようなことが

あった人もいるのではないでしょうか。

発言から、意識の低さが露見することもままあります。

政治家が問題発言を取り沙汰されるのも同様ですが、

「ことば」から、ふだんそんなことを考えているのか!といった驚くべき思考が垣間見えてしまうこともあると思います。

 

ただ、今回、面と向かって違う立場の人々がコミュニケーションを取る様を見たことで、

こうした対面のコミュニケーションでは、そうしたことは起きにくいかもしれない、と思いました。

相手の発言を、言葉の背景も含め、全体として理解するからです。

インターネットの功罪とともに、対面のコミュニケーションで大人が議論していくことの大切さも痛感しました。

 

 

子どもに関わる問題では特に、「どんな現場を見てきたか」「どんな子どもを知ってるか」

「これから先、どんな子どもと関わっていくか」によって、

自らの「子ども像」や「それに関する価値観」が大きく左右されるのだと自覚する必要があると思います。

「情緒障害児短期治療施設」にいる子どもなのか、「保育園」にいる子どもなのか、「里親さん家」にいる子どもなのか、

電車で隣り合わせた子どもなのか、親戚の子どもなのか。。。

親の顏を覚えている子どもなのか、親と定期的に会っている子どもなのか。。

 

どんな子どもと会ってきたか、それぞれに違うはずです。

話を聞けば、「そんな子どもがいるなんて、知らなかった!」という経験をするかもしれません。

 

だから「全部に納得がいく答え」っていうのは、ないのかもしれません。

ただ、多くの人が関心を持つきっかけになれば、この世界は大きく変わるんじゃないかと思います。

 

相手の立場にも理解を示し、見てきた世界や子どもの姿を想像し、

相手の想いも尊重した上で、なるほどと思えば認める、足りないと思えば教えてあげる。。

議論するごとに、互いに発見があるはずです。

こうして発言している私自身、至らない視点もたくさんあるかもしれません。

そんな場合には、教えてほしいです。

 

「ヒト」としての原点を忘れずに、拡げていきましょう。議論の輪を。


About Mutsumi

龍庵塾でブログを担当している「むっちゃん」です。 ペンネーム:芦田むつみ コモンセンス・ペアレンティング・トレーナー


2 thoughts on “子どもたちのことについて、今こそ大人が話しましょう

  • イブ

    「議論するごとに、互いに発見があるはずです」
    議論するほどの意見のない私ですが
    そう、もっともっと本音で、話し合うことをと思う

    • Mutsumi Post author

      イブさんが、さまざまな活動をされてる中で感じてらっしゃること、
      その根本の想い、お聞きしてみたいです(*^^*)
      議論といって固くなっちゃいましたけど、
      シェアリング♪ですね♬

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